冬のぬくもり
しくしくと触れる冷たい空気に、指先が凍りつくようだ。
普段は高めの体温も流石に下がりきっている。
少しばかり春の兆しが見えてきたからといって、暖房もつけない部屋でうたた寝などするものではないな、と、城之内は思わず自身の腕を擦った。
団地の狭い自室ならばまだしも、童実野町一大きな屋敷の無駄に広いこの部屋で、とあっては、自分一人の呼気と体温だけで空間を温められる筈もない。
(そういやカーテンも閉めてなかったっけか)
ふと思い至って目を向ければ、冷たい硝子が、それでも辛うじて外気との温度差を感じ取っているのだろう。うっすらと白く曇っていた。
「さみ…っ」
ぶるりと身を震わせて、城之内は急々とベッドに潜り込む。シーツの冷たさにぞくりと肌が粟立ったが、少し我慢すればすぐに体温に馴染むだろう。
ふわふわの羽毛布団から目元だけを覗かせて盗み見た時計の針は、暗くてはっきりとは見えなかったが、恐らく午前二時を回った辺り。
未だ部屋の主は帰らない。
「仕事、しすぎだっつーの…」
漸く温まってきた上掛けを改めて体に巻きつけ、城之内はふぅと小さく溜息を吐いた。
カーテンを閉め忘れたままの窓の外。暗闇がぽっかりと口を開けている様をまんじりと眺め、少しつまらなさそうに寝返りを打つ。
冷え切った指の感触がない。
「つめてー…」
思うように動かない手をひたすら摩って、はぁっと温かな呼気を吹きかける。
部屋の中ですらこうだというのに、車を降りて邸の玄関を潜るまでの間、あの男はどれ程寒い思いをするのだろう。疲れきった身体に夜更けの底冷えは堪えるに違いない。
「まぁアイツのことだから、風邪なんてひきやしねェだろうけどよ」
ウイルスの方から逃げていくしな、と身を折って一人くつくつと笑う。
せめて眠りに就く時には温かな腕で包んでやりたい…などと考えてしまう自分は、相当終わっているのではないだろうか。
「うわ…恥っず」
一人言ちて、城之内は上掛けを頭の先までぐいぐいと引き上げた。
とりあえず、あの男が帰り着くまでに、もう少し寝床を暖めておいてやるとしよう。
凍えた身体をこの身の熱で溶かしてあげたい。
+ END +

携帯サイトの10000hit記念SSでした。甘!恐らく自分の話の中で一番甘い話だと思います。
あまりの寒さに頭が凍り、「城に暖めて貰いたい〜」などと寝言を言いながら書いたものです。
人間湯たんぽ城。社長が羨ましいぜ。
■ 2003.02.28 ■