城之内はほっとしたように目元を緩め、再び台座に凭れ掛かった。ごつん、と意図的に後頭部を台座に触れさせ、エジプトの高い夜空を眺め遣る。
 濃紺の闇を埋め尽くす白い星屑。今宵は新月だろうか。殊更に明るい月の光がない分、小さな星々の光まで余さず地上に届いていた。
 満天の星空というものを、生まれて初めて見たかもしれない。そう思い、酷く穏やかな気持ちになる。
 童実野町は都会のわりに星が良く見えると言われていたが、これを見てしまうと「どこが」と鼻で笑わざるを得ない。不純物のない、本当に澄み渡ったこの空に勝るものなど、現代の日本ではまずお目に掛かれないだろう。
 出来れば生身の身体でこの空気を体感したかった、と城之内は残念そうに溜息を吐いた。
 乾燥したこの土地では、湿った熱が地上に籠ることもない。夜の風はさらさらと涼やかに肌を撫でていく筈だ。それを体感出来ないのは、何とも口惜しいではないか。
 動悸が落ち着いてきたところで一度大きく息を吸い、二度寝すべく再び瞼を下ろす。
 目を閉じても覚めないということは、一連の非現実的な出来事は、やはり何一つ夢ではないということだ。
(あいつがここにいたら何て言うだろうな)
 下らん、非ぃ科学的だ、と過剰反応を返してくるのだろうか。それともあっさり適応して、神のカードの元になったという石板でも探しに行くだろうか。あぁ、あの神官との相性は悪そうだ――――
「!」
 折角瞑った目をふと瞬かせ、城之内は口元に苦い笑みを浮かべた。
 無意識のうちにオカルト完全否定な現実主義者の顔を思い起こしていた自分に呆れてしまう。いくら何でも、今日はあの男のことを考えすぎだ。
 喉奥からク、と自嘲気味の声が漏れた。どうしてこれほどまでに囚われているのだろう。
 思えばあの雨の日から……否、遡ればもうずっと以前から、海馬瀬人という男は城之内にとってある種特別な存在だった。
 それは意味もなく癇に触るという意味であり、大の苦手という意味でもあり、ただひたすら気に食わない相手だという意味でもあり。
 不の感情でしか彼を見ていなかった心はしかし、バトルシティでの一件以降、どうにも絆され気味だ。
 好きだと告げられた意味は、実のところどう受け取って良いのか解からずにいる。男同士である以上、消沈している自分を奮起させるため以外の意味はなかったと思うのだが、そう考えると何故か、胸の奥が痛むのだ。