- side.J -

そう言えば空の色を気にしたのなんて、随分と久しぶりだった。
窓枠に切り取られた空を眺めながらふと考える。
忙しかった。 それに、ほんの少しだけ辛かった。
青く澄んだ空を眺める度、同じ色の瞳を思い出さずにはいられない。
もうどれだけ声を聞いていないだろう。
薄情なあの男は、海の向こうで自分のことなどすっかり忘れて、
嬉々として大好きな仕事に打ち込んでいるに違いない。
何かに集中するとすぐ他のことを忘れてしまう、あの男の悪い癖だ。
元気かよ、海馬。
ちゃんと飯、食ってるか。
モクバや社員さんたちを困らせてねェだろうな。
テメェのことだから、ホームシックなんてかかりもしねェんだろうけど。
ちょっと疲れて、溜息を吐いて、らしくもなくこちらを懐かしむようなことがあったら。
何時でもいい。電話の一つも寄越しやがれ。
首輪もつけず餌もやらず、いつまでも飼い主きどりでいるんじゃねーぞ。
テメェの可愛い可愛い飼い犬は、いつだって好きな時に檻を抜け出して、
この青い空の下を、駆けて行くことが出来るんだからな。

けれど何度日が落ちてもやっぱり待ってしまっている。
敢えて檻を抜け出さないそのわけを
きっとお互い知っているのだろう。