- 社長BD企画 3日目 -
10/22 18:24
仲間たちと暫しゲーセンで騒いだ後、城之内は予定通り街へと繰り出した。
浮かれた様子で別れを告げる彼に仲間たちは一様に首を傾げていたが、言い訳をしている余裕はない。何せ、気を抜けばすぐにも頬が緩んでしまいそうな浮かれ具合だったのだ。
最近学校に顔を出していない男は、恐らく弟との約束を果たす為に仕事を詰めているのだろう。
けれどあと三日もすれば、そんな彼の顔を拝むことが出来る。
それを思うたび城之内の鼓動は跳ね、意味もなく声を上げたくなるようなむず痒い衝動に襲われていた。
まさに、浮かれ気分最高潮。
無論、あの男は自分が顔を出した瞬間、盛大に嫌味を吐いてくれるだろう。だがそんなことは今更だ。彼から嫌味を取ったら全く別の生き物になってしまう。
城之内はくっと小さく喉を鳴らしながらバスを降り、大通りへ続く道の角を曲がった。
洒落た構えの店が多く立ち並ぶこの通りは、いつも人で溢れている。通り縋る人間がどんなにやけた顔をしていようと、気に掛ける者はいない筈だ。
「さて、どこに入っかな」
買う物の目星は予めつけてあった。ただそれをどこで買ったものかと悩んでいた城之内は、ややあってぽんと手を打ち―――
ぐるりと進行方向を変えて、安さが売りのディスカウントショップへと入って行った。
客で賑わう店内を縫うようにして出てきた城之内は、先にも増してにやにやと怪しげな笑みを浮かべていた。その手には、如何にも安っぽい店の袋が握られている。クラフト地にロゴがプリントされただけの、何の飾り気もない紙袋だ。
「どっちにすっか迷ったけど、やっぱこっちの方が実用的だよな」
弾んだ口調で一人言ちて、バス停への道を引き返し始める。
どの道嫌がらせだと思われるのならそれらしくピンクのリボンでもかけて貰おうかと思ったのだが、何せ冗談の通じない男だ。そこまでやっては殺されかねない。折角のプレゼントもその場で踏みつけられるのが落ちだろう。
(流石にそれは見たくないねェし)
心内で呟いて苦笑しながら、城之内は袋を持つ手にほんの少し力を込めた。
やはり何であれ受け取って貰いたいという気持ちはあるのだ。これを機に少しでも良い方向に転がれば、などという淡い期待は微塵も抱いていないけれど。
嫌がらせと取られても構わないから、ただ祝いの言葉を伝えたい。
所詮、ただの自己満足だ。
それでも、そんな気持ちが自分の胸の中にあるというだけで、城之内の心は幾許かの安堵を得ることが出来た。
相手にとっては本当に嫌がらせ以外の何ものでもないと解っている。
それでも。
バスを降りる。常より少し日は高いけれど、いつもと同じ帰り道。
城之内は夕日から目を背けるように、少しだけ視線を俯けて歩いた。
to be continued...